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ディープラーニングを用いたCT画像におけるCOVID-19判定システム

2022.09.29論文解説

背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2)により引き起こされる新興感染症であり、2022年9月現在も私たちの生活に多くの影響を与えている。COVID-19の診断は、通常PCR検査が用いられるが、検査結果を得るまでにかかる時間や精度が問題となっており、より短時間で高精度な診断方法が求められている。CTはこれらの欠点を補完する診断方法として注目を集めており、CTからの短時間・高精度な新型コロナウイルス肺炎の診断を目指し、新型コロナウイルス肺炎をAIによって診断する研究が数多くなされてきた。しかし、それらのほとんどはオーバーフィット等の欠陥があり、また評価が不十分であることから実用化には至っていない。オーバーフィットとは、開発時に用いたデータにモデルが特化しすぎてしまい、CT撮影機種やプロトコル等が異なるデータでは精度が低下する可能性がある状態のことであり、実用化のためにはこれらのデータの違いにロバストな(影響されにくい)AIの実現が不可欠である。

アプローチ

今回紹介する論文[1]では、従来の研究で問題となっていたロバスト性の向上と適切な性能評価の実現を目指した。

【ロバスト性】多施設から収集した3000を超えるCT画像を用いてPCR検査の陽性陰性を推定するモデルを学習した。学習時には、適切な前処理やデータオーグメンテーションを実施するとともに、肺疾患定量化AIによって得られた疾患マスクによって特徴量を補正することで、高精度且つCT撮影機種やプロトコルにロバストな推定を実現した(図1)。

【性能評価】開発時に使用したデータとは別の十分な数のデータ( 11の急性期病院から収集した約900CT画像)を使用して外部検証を実施することで、機械学習モデルの適切な評価を保証した。

本論文で実施した外部評価では、高感度の閾値では感度0.869, 特異度0.432、低感度の閾値では感度0.724, 特異度0.721であり、スライス厚にもロバストであることが確認できた(図2-3)。

まとめ

 本論文では、新型コロナウイルス肺炎のCT診断システムを開発し、適切な外部評価を実施した。提案手法は外部評価において高い感度を示し、これにより院内感染リスクの低減や医療資源の確保に貢献できる可能性がある。ただし、現状では特異度が比較的低いため、今後は臨床情報の活用などにより、更なる精度向上を期待したい。

図1. 提案手法[1](肺領域と肺疾患領域を抽出し、これらの情報をコロナ判別AIの学習に用いる。)

図2.外部評価における感度と特異度[1]

図3. 外部評価におけるROC曲線[1]
 

[1] Kataoka, Yuki, et al. “Development and external validation of a deep learning-based computed tomography classification system for COVID-19.” Annals of Clinical Epidemiology (2022): 22014.

DOI: https://doi.org/10.37737/ace.22014


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