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CNNを用いたCT画像における肋骨骨折検出技術

2023.07.21論文解説

背景 

肋骨骨折(図1)は胸部の外傷の中で最も多くみられる疾患あり、交通事故による大きな外力や、咳等の物理疲労が原因となり引き起こされる。診断は胸部の触診と画像診断により行われるが、胸部は範囲が広く、CT画像では数百枚の画像を確認する必要がある。そのため、全ての肋骨を隈なく読影するには時間がかかり、緊急時肋骨骨折の位置と種類を正確に評価することが困難なケースがある。以上のようなことから、肋骨骨折は外傷患者の全身CT検査において最も見落としが多い疾患となっている。 

図1. 肋骨骨折の例

アプローチ

今回紹介する論文[1]では胸部CT画像から急性期肋骨骨折を検出する技術を開発し、その使用による放射線科医の診断能への影響を評価している。開発においては大学病院より収集した539症例4906箇所の肋骨骨折を学習データとして、2ステージ型の物体検出CNNをベースとした3次元物体検出CNNを構築した(図2)CNNの出力を使用することによる医師の診断能への影響を評価するための読影実験では、放射線科医8名(専門医4名、非専門医4名)が胸部CT画像30件(90箇所の肋骨骨折を含む)に対して、①CNNの出力結果を用いずに読影、②CNNの出力結果を参照しながら読影の2stepで肋骨骨折箇所の検出を行い、①②それぞれの検出精度を比較する。読影実験の結果、CNNの出力結果を使用することで骨折の位置や種類医師の経験に関係なく、検出感度が向上することを確認できた(図3)。 

図2. CNNの学習フレームワーク[1]
図3. CNNの出力結果の利用時とCNNの出力結果の非利用時の各放射線科医のTPFとCNN単体のTPF(true-positive fraction: 真陽性率、*: P値<0.05)[1]

まとめ

本論文ではCT画像から急性期肋骨骨折を検出する技術を開発し、その使用により、骨折の種類や医師の経験に関係なく、放射線科医の診断能が向上することを示した。この研究は単施設研究のため、実臨床での本技術の有用性を明らかにするためには、多施設への拡大など更なる研究が必要である将来的には、こうした技術が医師の読影を補助し、肋骨骨折の見落としを防止し、緊急時のより正確な処置に繋がることが期待される。

[1] Azuma, M., Nakada, H., Takei, M. et al. Detection of acute rib fractures on CT images with convolutional neural networks: effect of location and type of fracture and reader’s experience. Emerg Radiol 29, 317–328 (2022). 

DOI: https://doi.org/10.1007/s10140-021-02000-6


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