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血管の連続性に注目して血管を種類別に抽出する方法

2023.06.20論文解説

背景 

肝がんは予後不良の疾患であり、死亡者数は悪性新生物の中では世界的には第3位となっている。肝がんの治療は肝機能がどれくらい保たれているか、肝臓以外の臓器に転移があるか、などに基づいて検討されるが、手術による切除は標準的な治療法となっている。安全で正確な肝切除を行うために、術前にCT画像を用いた手術シミュレーションを行うことが普及しており、シミュレーションではCT画像から門脈および肝臓の血管構造を抽出し、その走行を把握することが重要である。門脈および血管構造の抽出には、これまで深層学習を用いる方法も検討されてきたが、門脈および肝臓の血管が局所的に非常によく似ているために、誤抽出が発生するという問題があった(図1)。

アプローチ

今回紹介する論文[1]は、単に血管の種類をクラス分類するよう学習を行うのではなく、血管構造の連続性に注目した制約を課す方法を提案している(図2)。この方法では、従来の手法と同様に異なる種類の血管に属するボクセルはそれぞれ別の領域として抽出されるが、これに加えてニューラルネット内部の特徴空間において同一種類の血管同士は距離が近く、異なる種類の血管同士は遠くなるような制約を加える。結果、同一種類の血管を連続的に抽出することが可能になり、血管の種類が急に変わるような誤抽出を防ぐことができる。従来の手法と比較して、提案手法では血管の抽出精度が7~8%向上することを確認した(図3)。

図1. 門脈と肝臓の血管の構造(赤いバウンディングボックスは血管の種類を誤抽出している箇所)[[1]より引用改変]
図2. 提案手法の処理フロー [1]
図3.既存手法と提案手法の門脈と肝臓血管の抽出結果(肝臓血管が青、門脈が緑、赤いバウンディングボックスは誤抽出の箇所)[1]

まとめ

本論文では、血管構造の連続性に注目した制約を課すことで、既存手法より血管の抽出精度が7~8%向上することを確認した。将来的には、この技術を用いることで肝臓の手術シミュレーションがより簡便になり、安全で正確な肝切離に繋がることが期待される。

[1] Keshwani, D., Kitamura, Y., Ihara, S., Iizuka, S., Simo-Serra, E. (2020). TopNet: Topology Preserving Metric Learning for Vessel Tree Reconstruction and Labelling. In: , et al. Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention – MICCAI 2020. MICCAI 2020. Lecture Notes in Computer Science(), vol 12266. Springer, Cham. 

 DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-030-59725-2_2 


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