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臓器の形状変化に着目して非造影CT画像から腎腫瘍を抽出する方法

2023.11.06論文解説

背景 

腎臓はそら豆のような形状の握りこぶし大の臓器で、老廃物の排出や血圧の調整などを担っている(図1)。腎がんは腎臓の細胞ががん化したもので、古くは血尿、腹部腫瘤、疼痛(腰背部痛)が3主徴とされていたが、近年では他検査目的の非造影CT検査などで偶然発見されるケースがほとんどである。腎がんは非造影CTではコントラストが無いなどの理由により検出が難しく、腎臓の形状変化によってのみ指摘が可能な場合もある(図2)。しかし、通常のセグメンテーション(画像から臓器領域を分割する方法)では、こうした臓器形状の変化を捉えることができない。

図1. 腎臓の位置と機能
図2. 造影CT(CECT)と非造影CT(NCCT)の例 [[1]より引用改変]

アプローチ

今回紹介する論文[1]では、コントラストが無い腎腫瘍もセグメンテーションできるように、腎臓から突出した腫瘍の形状を明示的に教え込む手法を提案している(図3)。提案手法は3つのネットワークから構成されている。ベースネットワークは通常のセグメンテーション手法(3D U-Net)を用いて初期の腎臓および腫瘍領域マスクを予測する。次に、突出検出ネットワークが腎臓マスクから突出している領域を予測する。突出検出ネットワークの学習には、マスクを用いて作成した合成データを用いる。最後に、ベースネットワークと突出検出ネットワークからの出力を融合し、腎腫瘍の領域とする。公開データを用いた評価実験では、3D-UNet と比較して、提案手法の方が高いDiceスコア(正解マスクと予測マスクの重なり)と感度を達成した(表1)。

図3. 提案手法の概要 [[1]より引用改変]
表1. 公開データの非造影CTに対する提案手法の結果 [1]

まとめ

本論文では、コントラストのない腎腫瘍をセグメンテーションするために、腎臓の突出形状着目して学習する手法を提案した。腎臓に限らず、他の臓器でも腫瘍は非造影CTでコントラストがつかない場合がある。将来的には、この手法を肝臓や膵臓など他の臓器に拡張し、より高精度に腫瘍検出ができるようになることが期待される。

[1] Hatsutani, T., Ichinose, A., Nakamura, K., Kitamura, Y. (2023). Segmentation of Kidney Tumors on Non-Contrast CT Images Using Protuberance Detection Network. In: Greenspan, H., et al. Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention – MICCAI 2023. MICCAI 2023. Lecture Notes in Computer Science, vol 14226. Springer, Cham.

DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-031-43990-2_2


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