背景
近年、コンピュータ診断支援システムが注目されている。こうしたシステムを構築するためには大規模なデータセットが必要だが、多くの医用画像データセットは症例数が少なかったり、限られた疾患を対象としており、学習に十分な量を確保できない。そこで、開発においては画像を回転させたりノイズを加えるといったデータ拡張(data augmentation)を行うことでデータの多様性を確保する。
アプローチ
今回紹介する論文[1]では、肺のCT画像を対象に、敵対的生成学習(GAN)と呼ばれる機械学習の一種を用いて多様な肺結節を生成し、肺結節検出を行うCNNの学習に利用している。一般的に、GANはGenerator(生成ネットワーク)と呼ばれる本物らしい画像を生成するネットワークと、Discriminator(識別ネットワーク)と呼ばれる画像が本物かどうかを識別するネットワークの2つを持ち、これらを互いに競争させて学習させる。多様で自然な肺結節を生成するために、本論文では2つのDiscriminatorを採用している。ひとつは結節とその周辺のペアを本物かどうか識別し、もうひとつは結節のCT値に加えてその性状およびサイズ条件のラベルを使用して本物かどうか識別する(図1)。このGANを用いて生成した疑似肺結節は、2名の放射線科医でも本物かどうかの識別が難しく(表1)、このデータを用いてデータ拡張を行うことで、肺結節検出CNNで高い感度を達成できた(図2)。
まとめ
本論文では、GANを用いて自然で多様な肺結節のデータを生成し、それらを学習に用いることで肺結節検出の感度が向上することを示した。今後は、GANなどの生成AIを用いてより高精度な肺結節検出ができるようになるだけではなく、医学生などの教育にも役立つことが期待される。
[1] Han, Changhee, et al. “Synthesizing diverse lung nodules wherever massively: 3D multi-conditional GAN-based CT image augmentation for object detection.” 2019 International Conference on 3D Vision (3DV). IEEE, 2019.
DOI: https://doi.org/10.1109/3DV.2019.00085
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