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ディープラーニングを用いたCT画像におけるくも膜下出血診断技術

2024.01.31論文解説

背景 

脳卒中疾患の一つであるくも膜下出血(図1)は、脳を覆っているくも膜と軟膜の隙間(くも膜下腔と呼ばれる)に存在する血管が切れて起こる出血であり、脳卒中疾患の中でも特に死亡率が高い疾患である。くも膜下出血の診断は、意識障害や激しい頭痛を呈する場合には比較的容易であるが、軽度の頭痛など症状が軽度な場合には診断が困難な場合がある。診断には単純CTが利用される。経験豊富な放射線科医や脳神経外科医は高感度にくも膜下出血を拾い上げできるが、ほとんどの医療機関では救急外来で救急医などの非専門医が診察を行うため、初診時に見落とされるリスクがある。

図1. クモ膜下出血の模式図

アプローチ

今回紹介する論文[1]では、単純CT画像を用いてくも膜下出血の有無と位置を診断できるAIシステムを構築し、脳外科の専門医と非専門医による読影実験を行った。くも膜下出血の診断では出血の詳細な領域を知ることが重要であるため、領域抽出(セグメンテーション)の一般的なCNNモデルであるU-Netの3次元版を用いてAIシステムを学習した(図2)。このAIシステムは脳外科専門医5名と同等の精度でくも膜下出血の診断を行うことができ、その精度は非専門医よりも高かった(図3)。 さらに、AIの出力を参考にして単純CTを読影することで、非専門医の5人中4人の診断精度(F値)が向上し、感度も上がった(表1)。

 

図2. 3D U-Netの構造 [1]
表1. AI併用なし/ありの場合の5名の非専門医の読影実験結果 [1]

まとめ

本論文では、単純CTを対象にくも膜下出血を診断できるAIシステムを構築し、読影実験において良好な結果が得られた。将来的には、AIシステムを活用することで、専門医が不在の場合でもタイムリーな治療介入ができるようになり、くも膜下出血の治療成績が向上することが期待される。

[1] Nishi, Toru, et al. “Artificial intelligence trained by deep learning can improve computed tomography diagnosis of nontraumatic subarachnoid hemorrhage by nonspecialists.” Neurologia medico-chirurgica 61.11 (2021): 652-660.

DOI: https://doi.org/10.2176/nmc.oa.2021-0124


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