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深層学習を用いた胸部HRCTにおける3D類似画像検索システム:間質性肺疾患および通常型間質性肺炎に対する性能評価

2025.09.11論文解説

背景 

間質性肺疾患(ILD)を代表とする、びまん性肺実質疾患(DPLDs)は、一般病院でよく見られる疾患であるが、その種類が多くCT所見が多様なため診断が困難なケースが多い。経験豊富な放射線科医の間でも、CT所見の識別における医師間の変動性が高いことが報告されている。この問題の解決に向けて、近年人工知能(AI)技術を用いた診断支援システムが開発されており、その一つとして類似画像検索システムがある。本システムは、類似した画像所見を示す過去症例をデータベースから検索し、その診断結果を参照することで新規症例の鑑別診断を支援するシステムである。ユーザーは直感的に類似画像を識別し必要な情報を選択することができ、AIのブラックボックス課題を回避できると考えられる。

アプローチ

今回紹介する論文[1]では、深層学習による間質性肺疾患解析ソフトウェア(AIQCT)の解析結果を活用して、データベースへの登録・検索を完全に自動化した3D類似画像検索のプロトタイプシステムを開発した(図1)。

図1. プロトタイプシステムにおける画像解析フロー[1]

検索性能について、2058例のデータベースを用いて、70クエリに対する検索上位5例間の視覚的類似性を5段階スコア(5:類似、4:やや類似、3:どちらでもない、2:やや非類似、1:非類似)で評価した。評価結果(平均値±偏差)は、4.37±0.83であり、高い画像類似性を示した。臨床有用性について、301例のデータベースを用いて、25クエリと検索上位5例間における、鑑別診断の正解ラベル(ILD/non-ILDwith/without UIP) の一致度を評価した。正解ラベルの一致度(平均値±偏差)は、ILD0.94±0.15/non-ILD0.64±0.31with UIP0.86±0.17/without UIP0.83±0.24であり、UIP有無の識別において高い正確度を示した。

UIPUsual Interstitial Pneumonia・通常型間質性肺炎。肺の繊維化を示す画像所見であり、特発性肺線維症(IPF)で中心となる病態。

まとめ

開発した類似画像検索システムは、UIP有無の識別にて、高い正確度を有しており、臨床現場においてUIPの鑑別診断を支援する可能性を示唆している。

[1] Oosawa A, Kurosaki A, Miyamoto A, Hanada S, Nei Y, Nakahama H, et al. (2025) Deep-learning-based 3D content-based image retrieval system on chest HRCT: Performance assessment for interstitial lung diseases and usual interstitial pneumonia. European Journal of Radiology Open 15: 100670

DOI: https://doi.org/10.1016/j.ejro.2025.100670


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