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急性期脳梗塞の領域を医師の知見を活用して検出する方法

2022.12.22論文解説

背景 

脳梗塞は脳血管の閉塞により脳機能が障害される病気であり、日本では毎年5万人以上が命を落としている。何らかの原因で脳血管が閉塞すると、その先の脳細胞に十分な酸素やエネルギーが供給されずに壊死してしまう。この細胞死は時間経過とともに不可逆的に進むため、治療開始までの時間をいかに短縮するかが重要である。

治療方針の決定においては、画像検査の第一選択である非造影CTから、「脳梗塞の広がり度合い」を評価することが望ましいが、その画像所見は淡く視認困難である(図1)。そのため、専門医は脳の左右を比較して僅かな灰白質/白質コントラストの低下を同定する。一般的に、脳梗塞の診断では非造影CT検査の後に、より視認性が高いMRI検査を追加で実施するが、MRIはCTに比べて検査時間が長いという問題がある。

近年、MRI画像や亜急性期(急性期より後の急激ではないが徐々に病気が進行する期間のこと)を対象に、比較的視認容易な脳梗塞領域を検出する研究が行われてきた。一方で、非造影CT画像から発症直後の脳梗塞領域を検出する研究は、その難易度等の理由により、これまであまり行われてこなかった。

図1. 非造影CTとMRIの特徴と脳梗塞の見え方

アプローチ

今回紹介する論文[1]は、左右比較という専門医の知見を組み込んだモデルにより、非造影CT画像から発症直後の脳梗塞領域を検出する手法(図2)を提案している。学習には病院から収集した177例の発症直後の脳梗塞症例を用いている。まず、これらの非造影CT画像に対して2名の専門医が正解データ作成を行った。ただし、非造影CTのみでは「脳梗塞の広がり度合い」の評価が難しいため、MRI画像を参照しつつ、正解データを作成した。この正解データを用いて、脳の左右を比較する機構を組み込んで深層学習を行う。「脳の左右を比較する機構」は、 脳は大局的にみると左右対称な構造であることに着目し、入力画像の解像度を数段落とした後に特徴マップを左右反転させることで実現している。

「脳の左右を比較する機構」がある場合とない場合でモデル性能およびsensitivity map(モデルが画像のどこに注目しているか)を比較すると、「脳の左右を比較する機構」がある場合の方が性能が向上する(表1)だけではなく、モデルが脳の左右に注目して脳梗塞領域の検出を行うようになる(図3)ことが確認できた。

図2. 提案手法の学習ネットワーク[1](入力画像の解像度を数段落とした後に特徴マップを左右反転させて重ね合わせる)
表1. 評価データセットでの性能比較[1]
DSC:Dice similarity coefficient (1に近いほど領域の一致度が高い
W/O LR comp.:左右比較なし
W/ LR comp.:左右比較あり
図3. 提案手法の結果例[[1]より引用改変](提案手法の方が sensitivity map(モデルが画像のどこに注目しているか) の左右に信号が見られる)
まとめ

本論文では、非造影CT画像から発症直後の脳梗塞領域を検出する新しいモデルを構築し、性能が向上することを確認した。ポイントは、脳の左右を比較するという専門医の知見をモデルに組み込んだことである。脳梗塞の画像検査の第一選択である非造影CTから「脳梗塞の広がり度合い」を評価できるようになれば、将来的には、時間のかかるMRI検査をせずとも治療開始することができるようになるかもしれない。今後の更なるAIの精度向上と臨床現場での検討を期待したい。

 

[1] Takuya Fuchigami, Sadato Akahori, Takayuki Okatani, and Yuanzhong Li “A hyperacute stroke segmentation method using 3D U-Net integrated with physicians’ knowledge for NCCT”, Proc. SPIE 11314, Medical Imaging 2020: Computer-Aided Diagnosis, 113140G (16 March 2020)

DOI: https://doi.org/10.1117/12.2549176


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