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様々な条件のCT画像をAIでスライス補間する方法

2023.01.17論文解説

背景

CT画像にはスライス間隔が密なthinスライスと、間隔が疎なthickスライスがある(図1)。Thinスライスの方がthickスライスより3D視認性が高く、詳細な診断が可能となる。しかし、thinスライスはデータ容量が大きいため、全ての症例でデータを保存しておくことは難しく、過去データについてはthickスライスのみ保存されているケースもある。近年はAIの発展により、低解像度な画像を高解像度化することができるようになってきた。敵対的生成学習(GAN)と呼ばれる機械学習の一種では、データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成したり、特徴に沿って画像を変換したりできる。Generator(生成ネットワーク)と呼ばれる本物らしい画像を生成するネットワークと、Discriminator(識別ネットワーク)と呼ばれる画像が本物かどうかを識別するネットワークの2つを持ち、これらを互いに競争させて学習させる。しかし、従来のGANアプローチでは、多様な条件の画像生成を安定的に実現することが難しく、出力する画像特徴が非常に限られてしまうモード崩壊という状態に陥るという課題があった。

アプローチ

今回紹介する論文[1]は、全身多様な部位多様なスライス条件に対してthickスライスから仮想的にthinスライスを生成できる3D-conditionalGANの手法(図2)を提案している。まず、頭部・胸部・腹部・脚部を含むthinスライスデータセットに対して、スライス枚数を減らしたランダムな条件のthickスライスをシミュレーションで生成する。これらのthickスライスとthinスライスのペアを学習に用いる。ポイントは Discriminatorにのみ入力画像の部位ラベルおよびシミュレーション時のthickスライス条件(間隔など) を、画像と合わせて入力することである。条件画像と画像の対応関係を3Dで学習することで、Generatorは様々な画像を生成できるようになる。本論文では、3つの従来手法( Bicubic/ SRCNN/ Pix2pix )との比較実験を実施し、画質評価・視認評価ともに提案手法で最高のスコアが得られた(表1, 図3)。

まとめ

本論文では、thickスライスから仮想的にthinスライスを生成する手法を提案した。従来のGANの課題であったモード崩壊を回避した3D-conditionalGANの学習手法により、任意部位/任意スライス条件の画像入力に対して高精度な推定が可能になった。今後は、thickスライスでは処理が難しい画像認識タスク(椎体ラベリングなど)の前処理としてこの技術を用いたり、thickスライスしか保存されていない過去検査に適用することで比較読影が容易になることが期待できる。

図1. ThinスライスとthickスライスのCT画像

図2. 提案手法の学習フレームワーク[1](Discriminatorにのみ部位ラベルやスライス条件間隔などを画像と合わせて入力する)
表1. 提案手法と既存手法のPSNRとSSIM [[1]より引用改変]
PSNR: Peak Signal to Noise Ratio
SSIM: Structual SIMilarity
(PSNRとSSIM は客観的な画質劣化を評価するために広く使用されている方法)
図3. 各手法の生成画像と視認評価実験の結果 [[1]より引用改変]
 

[1] Kudo, A., Kitamura, Y., Li, Y., Iizuka, S., Simo-Serra, E. (2019). Virtual Thin Slice: 3D Conditional GAN-based Super-Resolution for CT Slice Interval. In: Knoll, F., Maier, A., Rueckert, D., Ye, J. (eds) Machine Learning for Medical Image Reconstruction. MLMIR 2019. Lecture Notes in Computer Science(), vol 11905. Springer, Cham. 

DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-030-33843-5_9 


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