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半教師学習を用いた直腸がん壁進達度を判定可能なセグメンテーション技術

2025.03.31論文解説

背景 

大腸がんは大腸の内側の粘膜から発生し、進行すると深部へと進展していく(図1)。大腸がんのうち、日本人は直腸癌が多く、全体の40%を占めている。直腸癌の治療方針の決定には、癌の浸潤領域の把握やステージ診断が重要であるが、すべての施設で高精度に診断をすることは難しい。

図1. 直腸癌のT分類

アプローチ

今回紹介する論文[1]では、術前の直腸癌患者のMRI画像から癌と周辺領域を抽出し、領域間の包含関係からステージ診断を行うアルゴリズムを提案している。直腸の管形状を保持した病理標本を作成し、これを参照して高品質な正解領域ラベルを作成した(図2)。学習データ不足を補うために、正解のステージラベルだけがついていて領域ラベルの無いデータも学習し、また、各領域のセグメンテーションを学習するのと同時に、正解と推定のステージの一致率を評価するlossを利用してステージを学習した。ステージT2以下/T3以上分類(癌領域が直腸領域の中に含まれていたらT2、はみ出したらT3)の感度/特異度/精度はそれぞれ0.773,/0.768/0.771であり、直腸癌、直腸、直腸間膜のdice係数(領域間の類似性を評価する尺度)はそれぞれ0.727, 0.930, および0.917であった(図3,4)。

図2. 病理標本を参照した正解データ作成 [1]

図3. セグメンテーション結果例 [1]

図3. 腫瘍径とDice係数の関係 [1]

まとめ

本論文では、深層学習を用いて直腸がんのステージングをするアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムはステージングをするだけでなく直腸癌、直腸、直腸間膜の領域を表示できるため、外科手術時の切除ラインの決定への活用も期待できる。

[1] Hamabe A, Ishii M, Kamoda R, Sasuga S, Okuya K, Okita K, et al. (2022) Artificial intelligence–based technology for semi-automated segmentation of rectal cancer using high-resolution MRI. PLoS ONE 17(6): e0269931.

DOI: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0269931


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