背景
アルツハイマー病(AD)は認知機能の低下を引き起こす病気であり、認知症の中で最も多い。脳神経が変性して脳の一部が萎縮する過程で起きるが、その原因はまだ完全には解明されておらず、世界中の社会問題の一つとなっている。ADの根本的な治療は2023年時点では存在せず、一度失われた認知機能は回復しない。そのため、ADを早期に診断し認知機能低下を抑制することが重要である。軽度認知障害(MCI)と呼ばれる「認知症ではないが健常に比べて認知機能が低下している」段階からADに進行するかを予測できれば超早期の診断・治療が可能となる。
アプローチ
今回紹介する論文[1]は、MCIから一年後にADに進行するか否かを予測する手法を提案している。MRI画像および非侵襲な臨床データ(認知機能スコア、遺伝子検査、年齢、性別)を入力とするマルチモーダル(=複数種類のデータを用いた)深層学習により予測器を構築した(図1)。マルチモーダルな学習を行う時には、異なる種類のデータをどのように統合するか、がポイントになる。本論文では、画像および臨床データのそれぞれから得られた特徴量を各要素の積(学習時はランダムに重みづけ)を用いて統合するbi-linear shake fusionという機構を用いている。これにより、本論文の提案手法では先行研究を上回る予測精度を実現した(表1)。
まとめ
本論文ではbi-linear shake fusionを用いたマルチモーダル深層学習により、MCIからADに進行するかを予測する手法を提案し、先行研究と比較して高精度に予測できることを確認した。将来的には、この技術を用いることでADの早期診断・治療を実現できることが期待される。
[1] Tsubasa Goto, Caihua Wang, Yuanzhong Li, and Yukihiro Tsuboshita “Multi-modal deep learning for predicting progression of Alzheimer’s disease using bi-linear shake fusion”, Proc. SPIE 11314, Medical Imaging 2020: Computer-Aided Diagnosis, 113141X (16 March 2020)
DOI: https://doi.org/10.1117/12.2549483
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