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ディープラーニングを用いた胸部X線画像における肺結核検出技術

2024.09.09論文解説

背景 

結核は結核菌という細菌による慢性感染症であり、日本では明治時代から昭和20年代まで「国民病」「亡国病」と恐れられた。国をあげての予防や有効な薬の登場により、日本における死亡率は大幅に減少したものの、世界中で毎年推定1060万人が発症し、160万人が死亡している重大な感染症である。日本における結核の定期健康診断では胸部X線検査が一般的だが、医師不足の新興国などでは実施が難しく、世界保健機関(WHO)はXpert検査という喀痰を使った迅速検査を推奨している。一方で、Xpert検査は喀痰の採取が必要となるため無症状の場合には利用しにくい。近年では医師不足の地域でも胸部X線検査による診断ができるように、結核の検出を支援するAIも登場している。

アプローチ

今回紹介する論文[1]は、胸部X線画像から結核を検出するAIを開発し、カンボジアの地域密着型の積極的症例探索(active case-finding:ACF、従来型の医療施設で患者を待つ受動的なアプローチではなく結核感染リスクの高い人々に積極的に検査を実施して患者を特定するアプローチ)で収集したデータセットでの性能評価を行っている。開発したAIは、肺と心臓の領域を抽出・正規化した胸部X線画像を入力として、畳み込みニューラルネットワークを使って結核の分類スコアと予測領域のマップを出力する。評価実験の結果、AI の結核スコアは医師による結核の病型分類と有意に相関し、 Xpert検査結果に対するAUROC 0.86 (95%信頼区間0.83 0.89)だった。トリアージ目的の閾値ではXpert陽性結核症例の95%、スクリーニング目的の閾値ではXpert陽性結核症例の98%を検出できた。

図1. AIの分類スコアと医師による結核の重症度の分類[1]
図2. AIの性能と医師の読影結果[1]

まとめ

本論文では胸部X線画像から結核を検出するAIを地域密着型のACFデータを用いて評価し、Xpert陽性結核症例の検出が高精度にできることを示した。将来的には、こうしたAIにより、医師不足の地域でも結核の早期発見・早期治療が可能になることが期待される。

[1] Okada, K., Yamada, N., Takayanagi, K. et al. Applicability of artificial intelligence-based computer-aided detection (AI–CAD) for pulmonary tuberculosis to community-based active case finding. Trop Med Health 52, 2 (2024).

DOI: https://doi.org/10.1186/s41182-023-00560-6


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